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旅行・観光向け高精度AIプロンプトの作り方:NG例と改善例

旅行の計画を立てる際、ガイドブックを何冊も広げたり、SNSのハッシュタグを何時間も検索したりして、疲れてしまった経験はありませんか。せっかくの楽しい旅行も、準備段階でエネルギーを使い果たしてしまっては本末転倒です。

ここで登場するのが、ChatGPTやGemini、Claudeといった生成AIです。しかし、ただ単に「おすすめの旅行先を教えて」と聞くだけでは、AIは当たり障りのない、つまらない回答しか返してくれません。AIの実力を引き出せるかどうかは、私たちが入力する「プロンプト(指示文)」の質にかかっています。

この記事では、旅行・観光の計画を劇的に効率化し、かつ満足度の高い旅を実現するための「高精度プロンプト」の作り方を解説します。非エンジニアの方でもすぐに使える具体的な「NG例」と「改善例」をセットで紹介しますので、ぜひ次の旅行計画で試してみてください。

プロンプトとは?AIを「優秀なコンシェルジュ」にする鍵

まずは基礎知識から始めましょう。「プロンプト」という言葉を聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、簡単に言えば「AIへの依頼書」のことです。

生成AIは、インターネット上の膨大なデータを学習した「超・博識な図書館司書」のような存在です。しかし、この司書は少し気が利かないところがあります。「面白い本を教えて」とだけ伝えても、「何が面白いかは人によるので、とりあえず一番有名な本を出しておこう」と判断し、ありきたりな提案をしてきます。

一方で、「30代のビジネスマンで、最近少し仕事に疲れ気味。週末に静かに読めて、前向きな気持ちになれる短編小説はない?」と具体的に伝えれば、驚くほど的確な本を選んでくれます。

旅行計画もこれと同じです。AIを「ただの検索エンジン」として使うか、「あなた専属の敏腕トラベルコンシェルジュ」として使うかは、プロンプトの具体性で決まります。

旅行プロンプトに必須の「5つの要素」

高精度な回答を引き出すためには、以下の5つの要素をプロンプトに含めるのが鉄則です。これを意識するだけで、回答の質が劇的に向上します。

  1. 目的地(Where): 具体的な国、都市、エリア
  2. 時期と期間(When): 季節、日数、具体的な日付
  3. 同行者(Who): 一人旅、カップル、子連れ家族、友人グループ
  4. 予算(How Much): 全体の予算感、または1食あたりの予算
  5. テーマ・雰囲気(What & How): ゆったり、アクティブ、グルメ中心、穴場スポット重視など

これらを組み合わせることで、AIは無限にある選択肢の中から、あなたに最適なプランを絞り込むことができます。

ケーススタディ1:旅行プランの作成

それでは、具体的なシーン別にNG例と改善例を見ていきましょう。まずは旅行全体のスケジュールを組む場合です。

NG例:情報が不足している

京都のおすすめ観光プランを教えてください。

このプロンプトを入力すると、AIはおそらく「清水寺」「金閣寺」「嵐山」といった、ガイドブックの表紙に載っているような超定番スポットを羅列するでしょう。初めて京都に行くならそれでも良いかもしれませんが、混雑を避けたい場合や、少しディープな京都を知りたい場合には役に立ちません。

改善例:ペルソナと制約条件を与える

以下のプロンプトは、先ほどの5つの要素に加え、「役割」と「出力形式」を指定しています。

Plaintext

# 命令
あなたはベテランの旅行代理店スタッフです。以下の条件に基づいて、最高の京都旅行プランを提案してください。

# 条件
- 目的地:京都市内(特に混雑を避けた穴場スポット中心)
- 時期:11月中旬の平日
- 期間:1泊2日
- 同行者:30代夫婦(静かな場所でゆっくり過ごしたい)
- 予算:現地での食事・移動・拝観料を含めて2人で5万円以内
- 嗜好:歴史ある寺院、美しい日本庭園、地元の食材を使った和食ランチ
- 移動手段:公共交通機関と徒歩

# 出力形式
以下の形式で表にまとめて出力してください。
| 時間 | 場所・アクティビティ | 魅力・おすすめポイント | 予算目安 |

なぜこれが良いのか

  • 役割の付与: 「ベテランの旅行代理店スタッフ」と定義することで、AIは丁寧かつ提案力のあるトーンで回答を作成しようとします。
  • ターゲットの明確化: 「30代夫婦」「静かな場所」という情報があるため、修学旅行生で溢れかえるような場所を避け、大人の隠れ家的なスポット(例:詩仙堂や圓光寺など)を選定してくれます。
  • 出力形式の指定: 表形式(テーブル)で出力させることで、タイムスケジュールが一目で把握でき、そのままスマホのメモ帳に貼り付けて持ち歩くことができます。

ケーススタディ2:レストラン・グルメ検索

次は、旅の醍醐味である「食事」のお店選びです。グルメサイトの点数だけで選んで失敗したくない時に有効です。

NG例:主観に頼る

札幌でおいしいラーメン屋を教えて。

「おいしい」の定義は人それぞれです。こってりが好きなのか、あっさりが好きなのか、AIには判断できません。結果として、ネット上で言及数が多い有名チェーン店が提示されるだけになります。

改善例:具体的な味とシチュエーションを指定する

Plaintext

# 命令
札幌・すすきの周辺で、地元民が通う隠れた名店のラーメン屋を3つ教えてください。

# 詳細条件
- スープ:濃厚な味噌ベースだが、生姜が効いていて後味はすっきりしているもの
- 雰囲気:観光客の行列が少なめで、カウンター席があり、一人でも入りやすい店
- 営業時間:夜22時以降も営業している(飲んだ後の締めに行きたい)
- 除外条件:全国展開しているような有名チェーン店は除外してください

# 教えてほしい項目
1. 店名
2. おすすめのメニュー名と価格
3. すすきの駅からの徒歩分数
4. 地元民の口コミ要約(なぜ人気なのか)

なぜこれが良いのか

  • 味の具体化: 「濃厚だが生姜が効いている」という具体的な味の好みを伝えることで、AIはレビューデータなどの学習元からその特徴に合致する店を探しに行きます。
  • 除外条件: 「チェーン店は除外」と明記することで、せっかくの旅行でどこでも食べられる味を選んでしまうリスクを回避できます。
  • 利用シーンの提示: 「飲んだ後の締め」という文脈を与えることで、ボリューム満点の店よりも、ハーフサイズがあったり、麺が軽めの店が選ばれやすくなります。

ケーススタディ3:ホテルの選定

宿泊予約サイトで条件検索をしても、「結局どのホテルが良いのか分からない」と迷うことはよくあります。AIに比較・検討を代行させましょう。

NG例:漠然とした要望

沖縄でいいホテルない?安くて綺麗なところ。

「安い」と「綺麗」はトレードオフの関係にあり、AIにとって最も難しいお題です。また、「いいホテル」の基準も曖昧です。

改善例:優先順位を明確にする

Plaintext

# 命令
沖縄本島(恩納村エリア)で、コスパの良いリゾートホテルを比較検討したいです。以下の条件に合う候補を3つ挙げ、それぞれのメリット・デメリットを比較してください。

# 条件
- 予算:1泊1室あたり2万〜3万円(2名利用)
- 必須設備:オーシャンビューのバルコニー、清潔な大浴場またはスパ
- 重視する点:建物は古くても良いが、清掃が行き届いており、リゾート感があること
- ターゲット:カップル利用

# 出力形式
各ホテルについて以下のフォーマットで解説してください。
1. 【ホテル名】
2. 推定価格帯
3. メリット(このホテルの強み)
4. デメリット(事前に知っておくべき注意点)
5. 総合評価コメント

なぜこれが良いのか

  • エリアの限定: 「沖縄」ではなく「恩納村エリア」と絞ることで、移動時間を考慮した現実的な提案になります。
  • 妥協点(トレードオフ)の提示: 「建物は古くても良い」という許容範囲を示すことで、AIは「築年数は経っているがサービスが良い名門ホテル」や「リノベーション済みのホテル」など、検索サイトのフィルタリングだけでは見つけにくい良物件を探し出せます。
  • デメリットの明示: あえてデメリットを聞くことで、「壁が薄い」「海までは少し歩く」といったネガティブ情報を事前に把握でき、予約後のガッカリを防げます。

さらに精度を高めるための「対話型」テクニック

一度のプロンプトで完璧な回答が得られなくても諦める必要はありません。今のAIは「文脈」を理解します。チャット形式で対話を続けることで、プランをブラッシュアップしていきましょう。

追加質問の例

AIが出してきたプランに対して、以下のようにフィードバックを返します。

  • 修正依頼: 「プランの2日目ですが、雨が降った場合の代替案(屋内施設)に入れ替えてください。」
  • 深掘り: 「提示してくれた3つのレストランの中で、特に日本酒の品揃えが良いのはどこですか?」
  • ルート最適化: 「この行程だと移動時間が長すぎませんか?もっと効率的に回れるルートに並べ替えてください。」

このように、AIを壁打ち相手として使い倒すことで、自分だけの完璧なプランが出来上がっていきます。

AI活用時の重要な注意点(ハルシネーション)

AIは非常に便利ですが、旅行計画においては致命的な弱点も持っています。それが「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」です。

AIは確率に基づいて言葉を繋げているため、存在しない観光地をでっち上げたり、すでに閉店した店を紹介したり、実際とは異なる営業時間を出力したりすることがあります。

必ずファクトチェックを行う

AIで作成したプランは、あくまで「下書き」として捉えてください。以下の情報は、必ずGoogleマップや公式サイト、食べログなどの最新情報で裏取りを行いましょう。

  • 営業時間と定休日: コロナ禍以降、営業時間が変わっている店が多々あります。
  • 料金: 物価上昇により、AIの学習データより値上がりしている可能性が高いです。
  • 交通手段: バスの路線廃止や時刻表の変更は頻繁に起こります。

「AIで大枠のプランと候補出しを行い、人間が最終確認をして予約する」という分業スタイルが、現時点での最適解です。

まとめ:AIプロンプトで旅行体験をアップグレードしよう

旅行計画におけるAI活用は、単なる時短テクニックではありません。自分の知識の範囲外にある「まだ見ぬ魅力的なスポット」との出会いを創出してくれるツールです。

今回ご紹介したプロンプトのテクニックをまとめます。

  1. 具体的に指示する: 誰が、いつ、どこで、何をしたいかを明確にする。
  2. 役割を与える: 「コンシェルジュ」や「現地ガイド」になりきってもらう。
  3. 形式を指定する: 表形式やリスト形式で、見やすく出力させる。
  4. 対話を重ねる: 一発で正解を求めず、フィードバックして修正させる。
  5. 最後は自分で確認: AIの嘘を疑い、最新情報をチェックする。

これらを意識するだけで、面倒だった旅行計画が、クリエイティブでワクワクする作業に変わります。次の連休や長期休暇の計画には、ぜひこの「高精度プロンプト」を活用して、あなただけの特別な旅を作り上げてください。

さあ、まずは気になる行きたい場所をAIに投げかけて、会話を始めてみましょう。

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